文部科学省が、2027年度(令和9年度)の予算要求で、大学を社会人の学び直しの拠点に作り変えるための新規事業に702億円を計上しました。「GRIT」と名付けられたこの事業は、大学が企業と連携してリ・スキリングのプログラムを開発することを支援するものです。
一見すると大学だけの話に見えますが、中小企業の人材育成にも関わってきます。何が起きようとしているのかを、公表資料の数字で整理します。
背景にあるのは、人材需要の逆転
文部科学省が示した2040年の人材需給予測は、率直に言って厳しい内容です。
2040年の人材需給予測(職種別)
事務職は437万人余り、その一方で現場を担う人材は260万人、AIやロボットを使いこなす人材は339万人足りなくなる。これまで大学が大量に送り出してきたホワイトカラーの需要が、急速にしぼんでいくという予測です。
資料には「ホワイトカラー需要が高かった工業化社会時代からの質・量ともに密度の低い大学教育では、我が国の創造的成長をリードする人材育成が困難」と明記されています。骨太の方針にも、大都市圏の大学を中心に人文社会系を縮小する方針が盛り込まれました。
学生そのものも減っていく
18歳人口の推移
18歳人口は2025年の110万人から、2040年には74万人まで減ります。15年で3分の1が減る計算です。
国はすでに、補助金の出し方で大学を選別しはじめています。2027年度の私学助成では、定員が埋まっていない大学への減額が171億円、教員1人あたりの学生数が多い大学への減額が277億円。あわせて、合併に向けた支援も予算化されました。
大学が向かう先が、社会人
18歳だけを相手にしていては経営が成り立たない。そこで文部科学省が掲げたのが、これまでの「18歳中心主義」からの転換です。
大学と企業の新しい関係
大学が企業と連携し、働く人のための実践的なプログラムを提供する。採択された大学には、5年後の「大学全体の収入に占めるリ・スキリング関係収入」の目標値まで設定させるという、踏み込んだ設計になっています。
702億円はどこへ向かうのか
GRIT 702億円の内訳(令和9年度要求額)
最も大きいのが、企業向けプログラムの開発費337億円です。大学の体制づくりに210億円、専門学校の高度化に102億円、働きながら修士・博士課程で学ぶ仕組みに53億円が続きます。
中小企業に関係するのは、この枠です
337億円の配分を見ると、国がどこを厚くしたいかがはっきり出ています。
プログラム開発費の枠配分
注目したいのは、エッセンシャルワーカー向けの95億円と、中小企業のAX(AIを活用した業務変革)向けの71.5億円です。この2つは都道府県ごとに枠が切られており、1件あたり5,000万円。地方の大学にも確実に予算が回る設計になっています。
つまり、お住まいの地域の大学が、医療・介護・建設・物流といった現場を支える人材向けや、中小企業のAI活用人材向けのプログラムを開発しはじめる可能性が高いということです。
企業から見れば、社員の学び直しの選択肢が増えることになります。厚生労働省の人材開発支援助成金や教育訓練給付金との連携も、資料に明記されています。
いつから使えるのか
これからの流れ
- 概算要求を公表現在地
- 政府予算案の決定
- 予算成立
- 公募開始
現時点ではまだ概算要求の段階であり、金額は確定していません。年末の政府予算案で固まり、成立は2027年3月ごろ。公募が動くのは早くて2027年度です。
逆に言えば、準備に使える時間が半年ほど残されているということでもあります。
当法人の見立て
大学側には、企業向けの研修を設計・運営してきた経験がほとんどありません。だからこそ文部科学省は、産業界の動向に知見のあるコーディネーターの配置や、学外講師の採用、実務家教員の登用まで補助の対象にしています。
人材育成に課題を抱えている企業にとっては、地域の大学と組む入口が広がる局面だと考えています。
なお、本記事の数字はすべて、文部科学省が2026年8月28日に公表した令和9年度概算要求資料に基づいています。要求段階の金額であり、確定した予算ではありません。制度の詳細は、今後の公募要領で確定します。
当法人では、補助金の活用支援とあわせて、人材育成やDX推進のご相談を承っています。「自社の業種で使える制度はあるか」「社員教育に使える補助金はないか」など、お気軽にお問い合わせください。
初回相談は無料です。
行政書士法人クロノス
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